あざみはトゲを持つ紫色の花で、歩道や山野でよく見かけます。
プレゼントで渡す花というより、自然の豊かさを楽しめる花といえるでしょう。
あざみは花屋さんに並ぶ機会が少ないため、親しみやすさより謎めいた印象を感じる花です。
そのためあざみの名前は知っていても、それ以上の情報はよく知らない方もいるでしょう。
そこで今回は、ミステリアスなあざみについて開花時期や種類、花言葉などを解説します。
さらに記事の後半では、トゲがあるのに食べられるあざみをご紹介します。
ぜひご覧ください。
種類によって変わるあざみの咲く季節
まずはあざみの開花時期から見ていきましょう。
あざみは春から初夏にかけて咲く種類と、秋に咲く種類があります。世界中であざみは300種類以上あると言われており、品種の数が非常に豊富です。
豊富な品種の中から、春に咲くあざみと秋に咲くあざみの代表品種をそれぞれご紹介します。
春に咲く「ノアザミ」
ノアザミは、春に咲くあざみの代表的な品種です。4〜7月頃にかけて花を咲かせ、山野の至る所で見ることができます。
ノアザミの特徴は、花びら下部の総苞(そうほう)から短い針のように飛び出しているトゲです。
他の品種に比べて控えめなトゲですが、触るときは充分注意しましょう。
ちなみに、春から夏頃に咲くあざみの品種は、このノアザミだけと言われています。
秋に咲く「タイアザミ」「フジアザミ」
秋を代表するあざみが、タイアザミとフジアザミです。
タイアザミは関東地方でよく見かける品種となります。
横向きに花を咲かせるのがタイアザミの特徴です。名前に付いている「タイ」は大きいという意味であり、アジアの国タイとは関係ありません。
フジアザミは、巨大な頭花が特徴的なあざみです。日本で咲いているあざみの中では、もっとも花が大きいとされています。
さらに、下向きに花を咲かせるため、他のあざみと比べて見分けやすいです。
総苞のトゲが大きく鋭いため、人によっては毒々しい印象を持つかもしれません。フジアザミは日当たりさえ良ければ、荒地や斜面にも生える強い生命力を持っています。
あざみの花の特徴
花にトゲがあることは珍しくありませんが、あざみは他の花と比較しても非常に存在感のあるトゲを付けています。
ここではあざみのトゲと、花が咲き終わった後のあざみの形状について解説します。
あざみのトゲは身を守る&乾燥を防ぐ役割
植物がトゲをつけるのは、主に以下のような理由があります。
- 外敵から身を守るため
- 水分の蒸発を防ぐため
トゲがあると動物から食べられるのを防ぎ、身を守りやすくなります。
あざみの中でも特に硬いトゲがあるのが、アメリカオニアザミという品種です。アメリカオニアザミは硬いトゲのおかげで食べられにくくなり、各地に広く繁殖したとされています。
また、トゲが水分の蒸発を防ぐのは、サボテンが乾燥地帯に生えていることからも納得できます。植物が水分の蒸発を防ぐには、空気に触れる表面積を減らさなければなりません。
葉っぱをトゲに変形することで表面積を減らし、水分の蒸発を少なくしているのです。
あざみは花が咲き終わると綿毛に
あざみは花が咲き終わった後、姿を大きく変えます。
開花後は受粉の準備のため、たんぽぽのように綿毛へと変化します。風に乗って遠くまで飛んでいき、新たに芽吹く場所を見つけるのです。
たんぽぽの綿毛に比べると、あざみの綿毛はサイズが大きく一本一本が長いのが特徴です。
あざみの花言葉
続いてあざみの花言葉をご紹介します。
あざみの花言葉は、凛とした強い姿を連想させる言葉ばかりです。花言葉の由来や、あざみとの関連性を解説します。
花言1「独立」「報復」
「独立」「報復」の花言葉は、スコットランドでの伝説が関係しています。
時はデンマークとスコットランドが戦争していた10世紀ごろまで遡ります。
戦争中、デンマーク軍は夜中にスコットランドへ侵攻を試みました。夜中だったため周囲は暗く、デンマーク軍は足下がよく見えない中進んだとされています。
実はデンマーク軍の足下にはあざみがたくさん生えていました。そして軍人の足にあざみのトゲが突き刺さり、痛みから叫び声を上げてしまったのです。スコットランド軍は軍人の叫び声に気付き、デンマーク軍の侵攻を防げたそうです。
あざみはスコットランドを守った花として、現在でもスコットランドの国花に指定されています。このような伝説から、あざみには「独立」「報復」という花言葉が付きました。
花言2「厳格」
厳格とは、「容赦しない」「手厳しい」などの意味があります。
あざみは真っ直ぐ上に向かって伸びており、咲いている姿が凛としています。安らぎを与える癒しの花というよりは、強いイメージのある花といえるでしょう。
そのため厳格といった花言葉が付けられたのではないでしょうか。
花言3「触れないで」
3つ目の花言葉「触れないで」は、あざみがトゲを持っていることに由来します。
あざみのトゲは短い針状のものから、長いとげまで様々な形状となります。中にはハリセンボンのように、丸い総苞全てをトゲで覆っているアザミも存在します。
あざみのトゲは触られることを拒否している様子に見えることから、「触れないで」の花言葉が付いたのでしょう。
花言4「自立・ひとり立ち」
「自立・独り立ち」の花言葉は、花が咲き終わり綿毛となって飛んでいく姿を表したものです。本来生まれ育った場所を旅立ち、新たな土地で咲く姿にぴったりの花言葉ですよね。
ちなみに、同じく綿毛となって飛んでいくたんぽぽには、「別離」という花言葉があります。
あざみはトゲトゲなのに食べられる!
あざみはトゲがありますが、実は食べられることをご存知でしょうか。痛そうなトゲがあるのに、どのように食べるのか気になりますよね。
ここではあざみの一般的な食べ方と、あざみの一種である野菜「アーティチョーク」についてご紹介します。
あざみの調理方法
食用に適しているのは、トゲが比較的柔らかい日本原産種のあざみです。火を通すとトゲがさらに柔らかくなるため、食べやすくなります。
葉っぱや芽など、部位ごとにおすすめの調理方法は以下の通りです。
- 葉→茹でる(おひたしや胡麻和えなど)
- 芽→揚げる(天ぷらなど)
- 根→炒める(アクが強いため下処理し、きんぴらなど)
山菜取りであざみを収穫する際は、くれぐれもトゲに気を付けてください。
イタリア定番野菜「アーティチョーク」もあざみの一種
イタリア料理で定番の野菜「アーティチョーク」。アーティチョークはあざみの一種となります。地中海地方では広く流通しており、茹でるとホクホクした食感がユリ根に似ています。
アーティチョークは、花が育つ前のつぼみの状態で収穫されます。
日本では栽培環境が適さないため、野菜としてはあまり出回っていません。どちらかと言えば、アーティチョークは日本では切り花として売られることが多いようです。
あざみの豆知識
最後に、あざみについてあまり知られていない豆知識をご紹介します。
ドイツアザミ・アメリカオニアザミの名前の由来
あざみには国の名前がついた品種が多くあります。代表的なのが、ドイツアザミやアメリカオニアザミです。
国の名前がついていると品種の原産国であるように感じますが、実はそうではありません。
ドイツアザミという名前は、日本で付けられました。大正時代、横文字がハイカラとされたためドイツアザミと名付けられたそうです。
また、アメリカオニアザミはヨーロッパ原産となります。
アメリカから日本へ輸入されたため、アメリカオニアザミと呼ばれるようになりました。
あざみ(薊)の漢字の由来
あざみは漢字で「薊」と書きます。
植物なのに魚の漢字が入っているため、不思議に感じるのではないでしょうか。
あざみの漢字が草冠・魚・刀(りっとう)で構成されているのは、以下の意味があるとされています。
- 草冠→植物
- 魚→魚の骨のように尖っている
- 刀(りっとう)→刃物のように鋭い
これら3つのあざみの特徴を組み合わせ、薊という漢字が作られたそうです。
「風あざみ」は存在しない?
井上陽水の代表曲の1つ「少年時代」では、『夏が過ぎ 風あざみ』という歌詞が出てきます。
実は風あざみは井上陽水の造語であり、現実には存在しません。
井上陽水は「オニアザミがあるなら風あざみもあるのでは」と、直感的に歌詞にしたためたそうです。
風あざみは実際には存在しませんが、風に吹かれているあざみの情景を彷彿とさせる美しさがありますよね。
春と秋は山野を散策してあざみを楽しもう
あざみは種類によって咲く季節が変わるため、春と秋両方の季節で楽しめます。
開花時期には山野によく咲いているため、登山やウォーキングに出掛けるとあざみを見つけられるでしょう。
あざみが咲いているエリアを歩くときは、トゲで怪我をしないように注意してくださいね。
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