1.はじめに

今回は話題になることが増えてきた「人工知能=AI」に関する話題です。最近のニュースはカタカナやアルファベットの略が多く、難しい印象を受けがちですが、実はAIは、じわじわと身近な存在になりつつあります。AIやロボットの普及で介護業界はどう変わっていくのでしょうか。

身近なAIでは、例えば携帯端末に「OK Google」と話しかける音声検索やアシスタント機能はTV-CMでずいぶん知られるようになりました。機器に話しかけるというのは、最初は気恥ずかしさがあっても、慣れるとその便利さに手放せなくなったという方も多いのではないでしょうか。

ここでは特に人が人をケアする「介護」にスポットを当て、AIが要介護者にとってどのような変化をもたらすのか最新事例を交えて紹介します。

2.日本の介護を取り巻く状況

日本はご存じのとおり少子高齢化が進み、4人に1人が65歳以上という超高齢化社会です。介護に関わる人材不足は明らかで、更にコロナ禍も加わって海外からの人的支援も望めなくなっています。
政府は、団塊の世代(約800万人)が75歳以上になる2025年には、医療や介護の需要がさらに増加することが見込まれていることから、介護・高齢者福祉の政策として「介護ロボットの開発普及の促進」を掲げました。この政策には助成金もあることから、介護ロボットを開発する企業が活発化し、様々な取り組みが加速しています。※後半でも詳しく紹介します。

3.介護利用者・介護者が困っていること

では介護に関わる人たちが、AIや介護ロボットに求めていることは何でしょうか。
介護利用者本人が困っていることは、認知機能の衰えによる「物忘れ」などのほか、身体の運動機能面の低下で「歩行」や「排泄」などが挙げられます。いかにして自立した生活を維持継続できるかが大切になっています。

次に在宅介護での介護者は、心身共に大きな負荷がかかっています。ワンオペレーションで交代要員がいないことが多く、着替えや入浴で抱え上げること、排せつの介助、夜間の見守りなどに困っています。AIや介護ロボットで体力的な問題と、精神的な負担の軽減が期待されます。

一方介護施設では、事務的な業務過多や、雑務業務が多く、慢性的に人員不足が問題になっています。介護施設では人員不足を補い、業務の効率化を期待してAIの活用や介護ロボットの導入が急速に進められています。しかし導入には高額な費用が掛かるので、大手企業体の施設でないとなかなか取り入れにくい状況でもあるようです。

4.AIが担う要介護者の自立支援と介護者の負担軽減

ロボットと人

AI(人工知能)とは「Artificial Intelligence」の略で、人の脳で行われている作業をコンピューターが模倣するもので、人の言語を理解し、経験から学習し、論理的な推測を導き出すプログラムのことを指します。

一般的にロボットとは、

  • 情報を感知する(センサー系)
  • 判断する(AI人工知能・制御系)
  • 動作する(駆動系)

3つのいずれかの要素をもった知能化した機械システムのことを指します。
このロボット技術が応用され、利用者の自立支援や介護者の負担の軽減に役立つ介護機器を「介護ロボット」と呼びます。この①②③がすべて搭載されるものや、それぞれ単体のもありますが、②の「判断する」仕組みを持った介護ロボットがAI搭載のロボットになります。

厚生労働省と経済産業省は、自立支援による高齢者の生活の質の維持・向上と介護者の負担軽減の両方の実現を図るため、「ロボット技術の介護利用における重点分野」として6分野13項目を今後の重点分野と掲げています。(平成29年10月改定
※〇は従来から、●は改定で新たに追加されたもの

「ロボット技術の介護利用における重点分野」

(1)移乗介助

  • ○ロボット技術を用いて介助者のパワーアシストを行う装着型の機器
  • ○ロボット技術を用いて介助者による抱え上げ動作のパワーアシストを行う非装着型の機器

(2)移動支援

  • ○高齢者等の外出をサポートし、荷物等を安全に運搬できるロボット技術を用いた歩行支援機器
  • ○高齢者等の屋内移動や立ち座りをサポートし、特にトイレへの往復やトイレ内での姿勢保持を支援するロボット技術を用いた歩行支援機器
  • ●高齢者等の外出等をサポートし、転倒予防や歩行等を補助するロボット技術を用いた装着型の移動支援機器

(3)排泄支援

  • ○排泄物の処理にロボット技術を用いた設置位置の調整可能なトイレ
  • ●ロボット技術を用いて排泄を予測し、的確なタイミングでトイレへ誘導する機器
  • ●ロボット技術を用いてトイレ内での下衣の着脱等の排泄の一連の動作を支援する機器

(4)見守り・コミュニケーション

  • 介護施設において使用する、センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム
  • 在宅介護において使用する、転倒検知センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム
  • ●高齢者等とのコミュニケーションにロボット技術を用いた生活支援機器

(5)入浴支援

  • ○ロボット技術を用いて浴槽に出入りする際の一連の動作を支援する機器

(6)介護業務支援

  • ●ロボット技術を用いて、見守り移動支援排泄支援をはじめとする介護業務に伴う情報を収集・蓄積し、それを基に、高齢者等の必要な支援に活用することを可能とする機器

「ロボット技術の介護利用における重点分野」より引用

この(1)~(6)に該当する機器が今後ますます活発に開発されていくことが予想されます。

5.最新事例・AIで介護はどう変わるのか?

ロボットと人の手

それではどのような機器が実際に製品化されているのか、AIが搭載されているもの、いないものも含め、具体的な介護ロボットの最新事例を紹介します。

◆ 身体的負荷を軽減する「移乗サポートロボット」

【(1)移乗介助③駆動系】の移乗サポートロボットは、ベッドから車椅子、車椅子からトイレへといった移乗動作をサポートします。
100kgの方まで安心・安全に移乗することができるので、介護者の身体負担を軽減し、腰痛を予防することができます。寄りかかるような体制は、介護利用者にとっても身体に負担がかかりにくく、介助者と双方にメリットがあることから、既に多くの介護現場に導入され普及が進んでいます。

◆ 高いところにも手が届く「多機能電動車いす」

【(2)移動支援駆動系】 に該当する③「多機能電動車いす」は、より段差が乗り越えやすく進化したものや、身体の負荷を緩和し、車椅子でありながら立位できる電動車いす Permobilなど、多くの種類が開発されています。
「すべての障害を持った人々が満足の行く生活をおくる権利がある」という考えのもと開発されたこちらの電動車いすは、自動販売機のコインを入れる位置など、高い位置に手を伸ばしたい時に、楽に対応できるようになります。
また、利便性だけでなく、座位を長く続けていると身体に負担がかかることから、車椅子でありながら立位もかなえられるように考えられて開発されています。しかもおしゃれなデザインなのが魅力的です。

◆ トイレのタイミングがわかる「排泄予測デバイス」

【(3)排泄支援①センサー②AI系】に該当するものでは、排泄予測デバイスがあります。
介護利用者の腹部にセンサーをつけると膀胱の容量を推測し、排尿のタイミングをパソコンのモニターやスマートフォンに表示して知らせてくれます。排尿のタイミングを知らせてトイレに誘導しやすくなり、もし漏らしてしまった時でも、おむつ交換のタイミングがわかるようになります。尿意を感じないという方でも、機械があらかじめ予測してくれるので、トイレの失敗を大幅に減らすことができ、介護者、介護利用者共に、精神的な面からもプラスに働くことでしょう。

◆ 24時間365日休まず見守る「見守りAIカメラ」

【(4)見守り①センサー②AI系】に該当するものでは、「見守りAIカメラ」(https://fantom.co.jp/service/casper)があります。介護利用者の部屋にカメラを設置することで、AIが居住空間や介護利用者の行動パターンを学習して異常が無いかを常に見守ります。行動パターンから外れた異常行動をしたときには介護支援者に知らせる仕組みなので、離れて暮らす家族や、24時間体制で見守ることができない夜間など、介護施設の人手不足解消の方法として期待されています。

◆ 人型ロボットでアシスタント増「AI介護支援ロボット」

最後にマルチな機能を持つ人型ロボットを紹介します。
【(6)介護業務支援①②③】に該当するもので、介護者の雑務処理を手伝うAI搭載介護支援ロボットがあります。その多機能ぶりには驚くばかりです。
コロナ禍によって消毒作業など、介護施設で職員が行う雑務は増え続けていますが、このAI搭載の人型ロボットは、施設館内の消毒清掃や、タオルや新聞、段ボールなど荷物の搬送を、単独でエレベーターを操作してフロア移動しながら行うことができます。しかも、介護利用者のを認識し、横向きや後ろ姿からも人物を特定して認識します。さらにその人物の姿勢から「立つ」「座る」「寝る」「倒れている」などの状態まで識別可能なので、日常の見守りまでも行えます。まさに、介護職の方にとってもアシスタント業務の雑務をお願いできる人型ロボットです。

6.まとめ

いかがでしたか。介護にかかわるAI介護ロボット技術は日々進化し続けているので、これからもAIに関するニュースから目が離せませんね。介護分野でもAIサービスの導入が進み、介護利用者、介護者共に暮らしやすい、優しい社会になることに期待していきましょう。